脳に迫る「化学人工知能」の夜明け 連載 第17回
「多細胞型ロボット」は宇宙へと旅立つか? 生命と機械との「界面」を越えて
著者:藤崎慎吾(作家・サイエンスライター)
上記記事の,より詳しく知りたい方向けの注釈です.こちらの文責は野村にあります.
随時Update予定です.
野村慎一郎
20230227 初版
20230302 リンク追記
…実際、細胞が集まることで、単体でいるより最大100倍も効率よく泳げるという研究が、2020年に東北大学から発表されています。
これは,機械系の同僚の先生達のお仕事ですね.Omori, T., Ito, H., & Ishikawa, T. (2020). Swimming microorganisms acquire optimal efficiency with multiple cilia. Proceedings of the National Academy of Sciences, 117(48), 30201-30207. 我々分子ロボ研は卒業研究などの議論でお世話になります.「動くとよいですね」とプレッシy…励まされています.
…モジュール型ロボットの一例。自ら様々な形に変形する M-TRANと呼ばれる.Murata, S., Yoshida, E., Kamimura, A., Kurokawa, H., Tomita, K., & Kokaji, S. (2002). M-TRAN: Self-reconfigurable modular robotic system. IEEE/ASME transactions on mechatronics, 7(4), 431-441. 分子ロボット/分子サイバネティクスの牽引者である村田智先生の代表作.動画はこちら→MTRAN3 Modular Robot
…野村さんも著者の一人となっている『分子ロボティクス概論』 大学院講義でも使っています,CBI学会のサイトで無料配布中(https://cbi-society.org/home/pub_ebook.html)です.冊子のカラー印刷版が欲しい方はAmazonからもお買い求めいただけます.
…「分子ロボットの進化シナリオ」
分子ロボットの概念を解説した論文,Hagiya, M., Konagaya, A., Kobayashi, S., Saito, H., & Murata, S. (2014). Molecular robots with sensors and intelligence. Accounts of chemical research, 47(6), 1681-1690. の,Fig.1のカラー版ですね.
動くアメーバ型分子ロボットの映像(60倍速)。右下の白線の長さは1/1000mm。
ミスです,すみません.修正依頼中.正しくは「1/100mm。」です.←修正済みでした.ありがとうございました!
…アメーバ型分子ロボットは、別の仕組みで似た機能を再現していると言えるでしょう。 2023年度に九工大の准教授になられた佐藤先生の博士課程でのお仕事.Sato, Y., Hiratsuka, Y., Kawamata, I., Murata, S., & Nomura, S. I. M. (2017). Micrometer-sized molecular robot changes its shape in response to signal molecules. Science robotics, 2(4), eaal3735. にごにご動いているところをはじめて見た時は心底感動しました.
…特定の波長の光を当てることで、切り替えることができます。
2023年2月現在,切替えが一方通行なのが残念.光応答性分子で波長を変えれば複数回いけるはず.どなたか挑戦されませんか.
…この「セントラルドグマ」と呼ばれる仕組みは、ある程度、人工的に再現できるようになっています。
セントラルドグマは,通常DNA→RNA→タンパク質,という分子情報変換の流れを指しており,「ある程度」とはその意味.産物であるタンパク質が活躍して,各矢印が示す転写,翻訳,およびDNAの複製までを含む全体の流れになると,安心してセントラルドグマと呼べます.手の出しにくい細胞内部とちがい,試験管内に抽出して操作するので各種分子的ギミックが足し引きできる点が「人工的」と言えます.
…(GFP)をつくらせることに成功しました。
一番乗りは当時大阪大のYuさん達.Yu, W. E. I., Sato, K., Wakabayashi, M., Nakaishi, T., Ko-Mitamura, E. P., Shima, Y., ... & Yomo, T. (2001). Synthesis of functional protein in liposome. Journal of bioscience and bioengineering, 92(6), 590-593..我々はちょっと遅れてNomura, S. I. M., Tsumoto, K., Hamada, T., Akiyoshi, K., Nakatani, Y., & Yoshikawa, K. (2003). Gene expression within cell‐sized lipid vesicles. ChemBioChem, 4(11), 1172-1175.でした.
…同様に微小管やキネシンなどもつくれるはずです。
微小管はその後の重合/脱重合抑制が必要なのでめちゃくちゃ難しいと噂で聴いていますが,モータータンパク質群の試験管内合成と機能発現は,大変ホットな研究テーマです.そのうちこの連載でも語られるはず...ですよねK州大のIさん.